顔を洗ったのはいいけれど、また化粧をするのは変だろうか。逆にすっぴんのほうが変だろうか。 考えあぐねて化粧はやめた。やけくそな気分で髪を乾かしている間にいい匂いがしてきた。 「うわー、すごいですね」 ちょうど、食事が運ばれてきたところだった。 「お疲れ」 「あっ、すみません」 専務は私の盃に日本酒を注ぐ。 浴衣の襟が大きく開いていて、逞しい胸板が見えるものだからなんだか落ち着かない。 なるべく専務を見ないようにと思っても正面だし、胸元を避けて上を見れば、目が合ってしまってしまう。