政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 お昼休み。窓際にある会議用のミニテーブルに移動して、西園寺ビルを見つめながら菓子パンを齧っていると、隣に咲子さんがやってきた。

「ちょっとちょっと聞いた?紗空ちゃん。御曹司帰国するらしいわよ」

「御曹司?」

「ほら、ここの創業者一族の御曹司、須王燎さん。十月からここで勤務らしいわ」

「へえ、そうなんですか」

「ねえ紗空ちゃん、須王燎さんってどんな人? やっぱり目立ってたの?」

 うかつな話はしたくないけれど、咲子さんは口が堅い。余計な噂話はしないと信頼できる。

 目を細め「ここだけの話ですよ」と念を押してから小声で答えた。

「まず、とてつもないイケメンです」

「それは知ってるわよ写真で見たもの。切れ長の瞳、高い鼻梁、180センチと背も高くて足も長い九等身。空手黒帯、現在ニューヨークでガンガン実績を出している。それ以外でお願い」

 素晴らしい情報量に圧倒される。空手黒帯は私も知らなかった。

「えーっと」

 須王燎。彼は私が青扇学園に入学した時、三年生だった。