「そうだ。メイドが格闘技のプロでも、おれはダンスのプロだ」
え、いつプロになったの? そりゃあプロのチームに誘われたこともあるって知ってるけど、モデルの仕事が忙しいって断ってたじゃない。
だいたいダンスでボクシングに勝てるものなの?
「ダンスは最強だ!」
蓮は素早い動きで左右にステップを踏んで、宙返りっ──て思ったら消えた!
ううん。違う。メイドさんに隠れて見えなかったけど、サッと屈んで彼女に足払いをかけていた。
「あっ!」
あたしと蓮を交互に見ていたメイドさんが見事に転んだ。
「すごい、蓮!」
「強いなの!」
「バカ、隙をついただけだ。急いで春音とことりを助けろ」
ええ! そうなの! はやく言ってよ。関心しちゃったじゃない。
「ギャア! またゴキブリー!」
蓮がゴムの虫をメイドさんの顔にバラマいてるのを横目に、あたしはリコちゃんと職員室へ飛び込んだ。
中には、
「いた!」
口を布でふさがれた春音くんとことりちゃんがイスに縛られていた。
「2人とも大丈夫?」
「んぐぐう」
「あんぐぐぐ」
「え? なに?」
「たぶん、布を取ってって言ってるなの」
「ああ、そうか」


