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コツコツコツコツ。
薄暗い廊下に足音が響きわたる。
その先には、
「あら、蓮くん、だったわね。ひとりなの?」
音を聞きつけて現れた黒ずくめの犯人。
「まさか犯人がことりをお世話するはずのメイドさんだったとはな」
蓮は質問には答えず、立ち止まった。
あたしはリコちゃんと一緒に、蓮とは反対側の階段から一階へ降りて職員室にそっと近づいていた。
蓮が囮になる作戦通り、犯人は蓮に気をとられていて、後ろにいるあたしたちには気づいていない。
この隙に二人を助けるの。
音を立てないように、ゆっくりとドアを開けなきゃ。
「君は勇敢みたいだけど、わたしはそんなに甘くないわよ」
「捕まえられるならやってみればいい。おれは捕まらないけどな」
なんだろう、離れてるけど蓮がすっごく頼もしく見える。
男の子って感じ。さすがは体力担当よね。
蓮……。がんばって!
あたしは心の中で応援して、職員室のドアに手をかけた。
けど、ちょうどその時──。
ドタドタドタ!
騒がしい足音が──えっ! あたしの後ろから!
「ことりー! どこだー、返事をしろー」
大悟さんだ!


