「バカ、静かに! おもちゃだよ。さっき見せただろ」
「え?」
ああ、そう言えば、春音くんに言われて蓮が用意していたやつだ。
「けど、だからっていきなり顔の前に出されたらビックリするでしょ! あたしは女の子なんですからね」
「暗くて見えないって言ってたから──」
「誰かいるのか!」
まずい!
思わず騒いじゃったせいで、見つかっちゃった。
上から大人の人の声が聞こえてきた。
「おい! 誰なんだ!」
明かりの点いていた部屋が開いて誰かが階段をドタドタ下りてくる。
「隠れろ」
慌ててあたしと蓮はソファの後ろに身を潜めた。
と、同時に電気が点いて近くから怒鳴り声が響く。
「隠れても無駄だ。絶対に逃がさねえから覚悟しろ!」
どうしよう! すっごく怒ってる!
「蓮!」
必死だけど小声で囁くと、蓮はあたしの肩を掴んでくる。
「おれが合図したら玄関に向かって走れ」
「わ、分かった。けど、蓮は?」
「おれもすぐに後を追うから安心しろ」
無言で頷くと、蓮はソファの裏からさっと飛び出し、
「くらえー! タランチュラだ!」
ポケットからホンモノそっくりな蜘蛛のおもちゃを取り出して投げつけた。
「タランチュラだと! うがっ! 口のながに──」
「いまだ! あみ、走れ」


