それに、なんかこういうのって映画みたいでドキドキするじゃない。


「遊びじゃないんだぞ」


「あみお姉ちゃん、気をひきしめるの!」


あれ、また口から出ちゃってたみたいで怒られちゃった……。

けど、あたしもふざけてる訳じゃないのよ。本物の誘拐犯と対決なんてやっぱり怖いから、こうテンションを上げれば少しは緊張が解れるのよ。


「分かったから、早く座れ」


「善は急げなの」


「は~い」


「準備はしてきたか」


「ばっちりよ」


あたしは背負ってきたリュックを下ろして中身を机の上に開けた。


「お弁当に水筒に、ブルーシートでしょ。それからお菓子。あ、このグミおいしいのよ。リコちゃん食べる?」


「わ~い。ありがとうなの」


「おい、あみ! お前はどこに行く気だよ」


「え、ああ、これは朝早く出かける言い訳で、蓮と親水公園へピクニックに行くって言ったらお母さんが準備してくれたの」


「もう少しマシな言い訳しろよな……」


「いいでしょ、別に。──あ、これよねこれ」


「それにこれな」


あたしと蓮は、昨日作戦を聞いた時に春音くんに用意すように言われたものをそれぞれ取り出した。