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クネクネクネ。あたしはタコ。あたしはタコよ。きゅうばんはないし、足も八本ないけどタコなのよ。
クネクネクネクネ、グニャグニャグニャ。
「おい、もっと腕をやわらかくして、指先から力を抜け。タコになりきるんだ」
「こ、こう?」
「いいぞ、その調子だ。じゃあいくぞ」
「う、うん」
「うおおおおっ!」
「タコ! あたしはタコ! タコタコ~ッ!」
あたしと蓮は、頭からシャツをかぶって顔を隠して、タコみたいにぐにゃぐにゃしながら昨日のあたしの前を通り過ぎた。
顔を隠したせいでお腹が見えちゃってちょっと恥ずかしかったけど、次元の狭間とかいう真っ暗闇に閉じこめられるよりは絶対にマシ。
チラッと見たら一昨日のあたしはすっごくおどろいた顔してた。
そりゃそうよね。だってあたしすっごくおどろいたもん。……ってなんか変な感じ。
角を曲がったところで蓮がシャツから顔を出した。
「ここまでくれば大丈夫だろう」
「うん。一昨日のあたしはあのまま学校へ行ったからもう会わないよ。──だけど蓮、あたしたちがタコ人間ってよく気づいたね」
「あみ自身が『一昨日のあみ』なんておかしな言い方するから気づいたんだ。過去のあみのことは今のあみなら全部知ってるはずだってな」
へえ~。蓮て意外と頭良い? え、でもそれじゃあ脳みそピーナッツなのってあたしだけ!
やだ~、ズルイ~。
「なに頭抱えてうなってるんだ。そろそろ行くぞ」
「そ、そうね。ピーナッツより大きいって言っても、ピーマンみたいに中身からっぽかもしれないし」
「なに言ってんだ?」
「いいの、いいの。こっちの話。さあ、ことりちゃんを助けにいこう」


