「実はことりの家は大金持ちで、この町に引っ越して来たのも前の町でことりが誘拐されそうになったことがあるからなんだ」


ア……アンビリーバボーだわ。

誘拐とか一億円とかテレビでしか見たことない……。


「それで、警察にはすぐ連絡したのか」


「それが……」


「おい、春音! まさかしてないのか!」


「それが、今は無事だけど警察に言ったらことりの命はないと思えって犯人が……」


「そんな……」


「それで、どうなったんだ」


「おじさんとおばさんは自分たちでなんとかするから、このことは誰にも秘密にしてくれって」


「お金を渡すってことか……。だけど、犯人は本当に約束を守るのか」


「わからない……」


ええ! わからないの!


ことりちゃんどうなっちゃうの。なによ犯人、最低じゃない。

だいたい子供をさらうなんて許せない!


「けど、だから、秘密にしろって言われたけど二人には話したんだ」


え? なんで。あたしと蓮に? 


「犯人がことりを傷つけないなんて保証はどこにもない。お金を渡しても本当にかえすかもわからない。だから……」


「なるほど。そういうことか」


え? なにがなるほどなの蓮。正義のヒーローとかならカッコよく犯人をやっつけちゃったりするんだろうけど、ただの小学生のあたしたちに秘密を話してどうなるの?


「あみ、まだわからないのか」


「なにが?」


「なにって、おれたち昨日なにをしてたんだよ」


「昨日?」


……昨日と言えば、給食はカレーだったわよ。おいしかったなあ。もう一回おかわりしとけばよかったかな。あ、なんだかお腹減ってきちゃった。


「おい、なんでカレーなんだよ」


「あれ、また声に出てた? エヘへ」


「放課後だよ。放課後」


……放課後?