Ice Boy*モテ姫との恋*

「大和先輩!1曲目のピアノ…お願いします!」


なかなかピアノを弾かない俺に堺さんが緊張した表情で言った。


客席に聞こえないくらいの小さな声で。


「大丈夫だから…おもいっきり歌って?緊張してることなんて忘れちゃうからさ!」


「…はい!」


俺は堺さんの笑顔を確認してから、深呼吸をし…


ゆっくりと音を奏でる。


イントロで曲がわかったようで、客席の反応が聞こえる。


でも、堺さんの声が音に絡み合いはじめると…シーンと静まりかえった。


堺さんの綺麗な声と俺のピアノの音だけが体育館に響く。


みんな…堺さんの声に聞き入ってるんだ。


ピアノを弾いてる俺も…堺さんの声に聞き入る。


本当に…天使のよう。


この曲を歌うプロの歌手に負けてない。