---幼稚園生---


バレンタインデーの夕方。


「ゆっくん!ゆっくん!」


「なぁに、まいちゃんっ」


小さな男の子に走り寄る女の子は私、麻衣。
今日はゆっくんこと、大好きな幼なじみ悠の家に遊びに行っていたのだ。



「今日はね、大好きな男の子にチョコをあげるんだって!」


「そーなんだぁ!」


「だからね、これっ!」


私は無邪気に笑ってラッピングされたそれを渡す。

それは、ゆっくんに渡しなね、と母親に言われて持たされたチョコだった。


「え、いいの!?」


「うん!まい、ゆっくん大好き!」


「ほんと!?僕もだよ!まいちゃんは僕のお嫁さんになるんだもん!」


「ありがとう!えへへ、まい、ゆっくんのお嫁さんになるの楽しみ!」


「うん!約束だよ!」


ゆっくんに差し出された小指に自分の小指を絡め微笑んだ。


母親達はその光景を微笑ましく見守っていた事だろう。







毎日のように、五時のチャイムがなるまで幼稚園で遊んで。休みの日には、二人で公園にいって。

ゆっくんと過ごせて、私は世界一の幸せ者だったよ。