数分走るとコンビニの姿が現れた。

 約2時間ぶりに外に出て、思いっきり空気を吸った。

 田舎、と言っても山山に囲まれているとか、見渡す限りが田んぼだとか、そんなことはなく、今いるコンビニも周りは家だらけで、なんなら近くには駅もある。

 人だって、そこそこ歩いている。

 田舎、と聞くと、イコール空気が綺麗、とか思い浮かべるけれど、そんなこともなく、むしろ目の前を走る多くの車の排気ガスで汚れてる気さえする。

「はあ、引越しなんてしたくなかったなあ」

「でもいいじゃん、あの石の子に会えるかもしれないんだから。おばあちゃんちの近くでだったよね?」

 ショルダーバッグから透明な石を出して太陽にかざした。太陽の光を反射して、これかというほどに輝くそれに目を細める。

「これは、綺麗だからとっておいてるだけだもん。そんな昔のことなんてどうでもいいし。ていうか、好きな人、いる……し」

 とは言うものの、それは数ヶ月も前に幻影となってしまった。

 好きな人は確かにいた。同じクラスで、あまり話したことはないけれど、音楽の授業の前に弾いていた彼のピアノに一瞬で心を奪われて、それからその人自身を好きになった。