授業の5、6限を潰して、校庭掃除が行われた。

だる〜と言っていたシズナも
他の友達とお喋りしながら、楽しそうに過ごしていた。

「もうゴミない〜?私、捨ててくるよ。」

私がみんなにそう呼びかけると、

「もうない!ありがとう!」

との事だったので、
ゴミ箱を抱えて校舎裏のゴミ捨て場まで運んだ。

"ゴミ"だと言っても、
落ち葉や小さな枯れ木ばかりで大して重く無い。

(あ〜、あった。ゴミ捨て場。)

ゴミ捨て場に向かって一人歩いていると
視界に何か煙のようなものが入った。

校舎がくぼんでいる、
ちょうど人目につかないところ。
俗に言う"ヤンキー座り"でタバコを吸っている人と目が合った。

(うっわ!最悪!!目が合っちゃった!
見てないフリして、さっさとゴミ捨てよう!!)

私は、フイっと反対方向に顔を向けて
見てませんよ〜とアピールしながらゴミを捨てた。

「おい。」

「ひっ!はい!」

やっぱりダメだった。。
脅される?殺される?!
最悪、誰かについてきてもらえばよかった…

私の腕をグイッと掴んだそいつは、
さっきまで自分がタバコを吸っていた所まで
私を引っ張った。


「ななな何でしょうか?!私なんにも見てません!」
半ば、泣きそうになりながら必死に訴えた。

だって、すぐ後ろは壁、
目の前に立ちはだかる背の高い人。
大声だしても、校庭掃除で校舎内にほぼ人はいない。
絶体絶命とは、まさにこの事。

「お〜。そうか。何にも見てないな?」

「見てません!」



キャハハハハ〜

遠くから、他の生徒の笑い声が聞こえる。
恐らく、こっちへ近づいてきている。

たっ、、助かった…?

「しぃっ・・黙ってろよ」

男はそう言うと
いわゆる"壁ドン"で私を自分と校舎の間に隠した。
逃げられない…。

フワッと香る、メンズ物の香水の匂い。
不覚にもドキッとしてしまう。
後ろに流した黒い髪。
そいつの左耳でゆらゆらと揺れる、長めのピアス。
背が高い。何センチあるんだろう。

あ・・・制服の襟章、青だ。
という事は、同級生。
こんな人いたっけ。。

そんな事を考えながら、そいつが離れてくれるのを待った。