トントン、とリズムよく階段を降りると、美味しそうないい匂いが鼻をくすぐった。
途端に、グゥッとお腹が鳴る。お腹は待ちきれないみたい。

「おはよう、唯」
「ママ、おっはよ~」
栗色の髪を一つに束ねた、そこらへんにいるような平凡なこの女性が、私のたった一人のママだ。
そんなママはいつもよりご機嫌な様子で、私に挨拶をしてくれた。

「……? 今日はえらく機嫌がいいね」
「そ、そうかしら~?」
ママが少し口ごもった為、私は違和感を感じた。
(……ママ、何か隠してるみたい…?)
ママはウソが下手だ。すごく分かりやすい反応をするから。
だから、隠し事をしてもすぐにバレちゃうんだよね。
(ママからまた、話してくれるかなぁ)
そんな風に呑気に考えをまとめ、私は制服のリボンを手に取った。
キュッと手際よくリボンを結び、形を整える。よし、上出来、上出来。

鏡の前に立ち、自分の髪をポニーテールにまとめる。
かなりクセのある髪も、結んでしまえばカモフラージュされるから、本当便利。
アメリカピンで軽く前髪を固定し、私はニッと鏡に笑いかけた。
笑顔ハナマル、満点バッチリOKだ。

「唯、朝ご飯できたわよ~」
「はーい、今行くねっ」

席に着けば、美味しそうな朝食が並んでいた。
ウインナーの香ばしい匂い、ホカホカと湯気がたつコーンスープ。
バターがいい感じに溶けているトーストは、本当に美味しそうなの!

「いただきます!」

私が元気よく食べ始めると、ママも席に座った。
そして、神妙な顔つきで話し始めた。