シッターさんがいてくれているとはいえ、夜に家に残してきてしまったので心配だ。

「そっか。そうだよな」

 雄飛はハッとして私から体を離す。

「帰ろう、家に」

「雄飛も一緒に? だよね」

「もちろん。意地でも帰る。車すぐに手配するからここにいろ」

 そう言うと、控室のドアを開けた。そしてマネージャーの女性にタクシーを呼ぶように指示を出す。

「あの、ユウヒさん。これから打ち上げが……」

「悪いけど、パス。大切な用事ができた、そう言ってくれ」
 
 
 翌日。役所への届け出を済ませ、私たちは正式に家族になった。事務所には事後報告するそうだ。

「本当に大丈夫なの?」

「曲も売れてるし、文句は言わせない」

 雄飛の曲は発表と同時に音楽配信され、デイリーランキング一位という快挙を成し遂げた。

冬に始まる主演ドラマの主題歌への起用も決定している。

「ところで雄飛、これからどこへ?」

 役所の駐車場に止めたる車に乗り込み私はそう聞いた。

「動物園だよ」

 朝飛が元気よく答える。私が知らないうちに二人で決めていたみたいだ。

「ふーん。男同士、仲がいいんだね。いいな」

「まあ、そういうなって。だったら二人目は女の子にしてくださいって神様にお願いしてみようぜ」

 雄飛はそう言って私の手を握って指を絡めた。

「いいの?」

「なにが?」

「二人目、とか考えてもいいの?」

 雄飛の仕事に差し支えるかもしれないと思っていた。

「いいもなにも、子供は二人欲しいって出会った頃に話さなかったっけ? 俺的には三人でも四人でも授かれるものならいくらでもいいとは思っているけど」

「ありがとう、雄飛。大好き」

「俺も、好きだよ」

 そう言って握った手を引き寄せて、私の手の甲にキスをする。そんな彼のぬくもりが心にしみて、思わず涙があふれた。

私の推しは最高の夫であり最高の父親だ。




おわり