「でっち上げ? 出まかせを言うなよ。お前たちは俺のいないときに好き放題してたんだろ」

 二人のために働いている時に俺を裏切って。

「信じてください、ユウヒさん」

「調子のいいこと言ってんじゃねえ」

 俺の怒りは頂点に達していた。震えるこぶしを握り締めて振り上げる。

「やめなさい、ユウヒくん」

 俺と秋山の間に割って入ったのは山上日出郎さんだった。
山上さんも番組の出演者で始まる前に楽屋へあいさつに行っていた。

「山上さん、どうしてここに」

 俺の質問には答えず、山上さんは歌うような口調で話し始める。

「君のリハーサルを聴いていてさ、なんてひどい歌なんだろうって思ったんだ」

「え……」

 これまで褒めてくれていたはずなのに。思わず言葉を失った。

「それで本番のあれでしょ、何やってんのって感じさ。とにかくあの曲を歌う資格は君にはないね」

「山上さん……」

「僕も若い頃は志津香のゴシップにいちいち腹を立ててたな。今思えばどうして愛する人のことを信じずに週刊誌のでっち上げた記事を信じたんだろうなって、年寄りの戯言よ」

戯言なんかじゃない。山下さんの言葉ですっかり目が醒めた。

「……俺、間違ってました」

「いいステージを期待してるよ」

 山上さんはそう言って俺の肩をたたいた。