国内線の到着ロビーには女性の姿が多くあった。
きっと私と同じようにチケットから到着時刻を割り出してきたのだろう。みんな気合の入った服を着て、一眼レフカメラを首から下げている子もいる。
到着時刻になると、みんな一斉に整列を始めた。私も朝飛とその列に並ぶ。
やがて一人二人と乗客がゲートから出てくる。すると突然女のたちが悲鳴のような歓声を上げた。
「キャー!!! ユウヒ~」
一斉にスマホとカメラが向けられ、ほかの乗客たちはぎょっとした表情のまま通りすぎていく。
雄飛はサングラスに上下黒のスエットにスニーカーといういで立ち。ラフで地味は服装のはずなのに、その場にいるだけで圧倒的な存在感を放っている。
その隣には秋山さんではなく、知らない女性が付き添っている。
「誰? 新しい、マネージャー?」
「ママ、怖いよ」
「朝飛。大丈夫だよ、いこう」
女性たちの歓声の大きさにおびえてしまった朝飛を抱き上げて、私は人垣をかき分けて進む。
「雄飛!!」
声を振り絞り、彼の名前を呼んだ。
「雄飛、気づいて!」
こっちを見て、ねえ、朝飛もここにいるの――けれど、雄飛は一瞥もくれることなく私の目の前を通りすぎていった。
「ママ、パパは僕のこと忘れちゃったのかな?」
無垢な瞳が不安に揺れていた。
「……そんなこと、ないよ。忘れるなんてあるはずないんだから……」
気付かないわけがない。サングラスの奥で私たちを見つけていたはずだ。じゃあどうして無視するんだろう。どうして……?
私は朝飛を抱いたままベンチに力なく腰を下ろした。
途方に暮れるというのはこういうことを言うのだろ。突然真っ暗な谷底に突き落とされてみたいにこれからどうしていいのかすら分からないでいた。
女性たちが帰り始め、到着ロビーへはまた別の飛行機から降りた客がやってくる。まるでさっきまでの喧騒が嘘みたいに静かなロビーへと戻ってしまった。
「……お家に帰ろうか、朝飛」
「うん。パパ帰ってくる?」
「……どうだろうね、お仕事忙しそうだから」
帰ってこないんじゃないかな。もう二度と。そんな気がした。
きっと私と同じようにチケットから到着時刻を割り出してきたのだろう。みんな気合の入った服を着て、一眼レフカメラを首から下げている子もいる。
到着時刻になると、みんな一斉に整列を始めた。私も朝飛とその列に並ぶ。
やがて一人二人と乗客がゲートから出てくる。すると突然女のたちが悲鳴のような歓声を上げた。
「キャー!!! ユウヒ~」
一斉にスマホとカメラが向けられ、ほかの乗客たちはぎょっとした表情のまま通りすぎていく。
雄飛はサングラスに上下黒のスエットにスニーカーといういで立ち。ラフで地味は服装のはずなのに、その場にいるだけで圧倒的な存在感を放っている。
その隣には秋山さんではなく、知らない女性が付き添っている。
「誰? 新しい、マネージャー?」
「ママ、怖いよ」
「朝飛。大丈夫だよ、いこう」
女性たちの歓声の大きさにおびえてしまった朝飛を抱き上げて、私は人垣をかき分けて進む。
「雄飛!!」
声を振り絞り、彼の名前を呼んだ。
「雄飛、気づいて!」
こっちを見て、ねえ、朝飛もここにいるの――けれど、雄飛は一瞥もくれることなく私の目の前を通りすぎていった。
「ママ、パパは僕のこと忘れちゃったのかな?」
無垢な瞳が不安に揺れていた。
「……そんなこと、ないよ。忘れるなんてあるはずないんだから……」
気付かないわけがない。サングラスの奥で私たちを見つけていたはずだ。じゃあどうして無視するんだろう。どうして……?
私は朝飛を抱いたままベンチに力なく腰を下ろした。
途方に暮れるというのはこういうことを言うのだろ。突然真っ暗な谷底に突き落とされてみたいにこれからどうしていいのかすら分からないでいた。
女性たちが帰り始め、到着ロビーへはまた別の飛行機から降りた客がやってくる。まるでさっきまでの喧騒が嘘みたいに静かなロビーへと戻ってしまった。
「……お家に帰ろうか、朝飛」
「うん。パパ帰ってくる?」
「……どうだろうね、お仕事忙しそうだから」
帰ってこないんじゃないかな。もう二度と。そんな気がした。



