推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)


 十分ほど待っただろうか、中から女性が出てきた。

「小森様?」

「はい、私です」

「社長は今外出中なのですが、お待ちいただけるのであればお会いするそうです」

「待てます」

 そのために朝飛をまたシッターさんに頼んできた。

「ではどうぞ」

 女性について中へ入ると、廊下の両側には所属タレントのポスターが貼っていある。もちろん雄飛のものもたくさんあった。

「こちらでお待ちいただけますか?」

 通されたのは入り口から一番近くにある部屋だった。来客なのだろうか、テーブルと両側にソファーが置いてあった。

「どうぞ、おかけください」

「ありがとうございます。失礼します」

 女性はお茶と水のペットボトルを日本テーブルに置くと、そそくさと部屋を出ていく。それから私はひたすら三田社長が戻ってくるのを待ち続けた。

 二時間後、部屋のドアがノックされ私は背筋を伸ばした。心臓が鼓動を速め、喉の奥が苦しい。

「お待たせしました。社長がお見えです」