私は口を噤んだ。秋山さんと食べたことは秘密だった。

「ん? どうした。なに作ったって?」

「カレーをね、作ったの。朝飛ったらたくさん食べて、そのまま寝ちゃったんだよ」

 私のする朝飛の話を頷きながら聞いてくれる。

「なあ。俺も食べようかな、まひるの作ったカレー」

「いまから?」

「昼から何も食べてなくて、腹減ってるんだ」

「じゃあすぐ温めるね」そういって立ち上がろうとすると雄飛は手で制する。

「自分で出来るさ。だからまひるはここにいて」

「わかった」

 雄飛キッチンへ向かった。でも、すぐに戻ってきてしまう。

「どうしたの?」

 少し様子がおかしい気がした。

「……やっぱやめてく。ダイエット中なの忘れてた。もう寝るよ」

「もう? 少し話さない? 私、雄飛にお願いがあって」

「なに?」

「来週なんだけど、一日、ううん半日でもいいのお休み取れないかな?」

 腕の骨折も治ったのでそろそろ店の片づけをしたいと思ってた。持ってきたい荷物もあるし。
でも雄飛は「ごめん」と言って私から目をそらす。

「……休みは取れない。来週は地方で撮影があって数日は帰れないし」

「そっか、仕事忙しいもんね」

 わかってはいた。でも、なんだか悲しい。どうにか予定をこじ開けてくれるかもだなんて淡い期待をしてたから。

「……頑張ってね」

「ありがとう。俺、風呂入るから先に寝てて」

 そう言い切られ、私は素直に従うことにした。

「そうするね。おやすみ」

「おやすみ」