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あと三十分で日付が変わる。

今日も雄飛は帰ってこないのかもしれない。三日も会えていない。日中、朝飛と過ごしている時は息をひそめている寂しさが夜の闇に紛れてやってくる。

「雄飛、会いたいよ……」

 テレビを見ていれば毎日ユウヒを見かけるけれど触れられないのは寂しい。ソファに身を委ね、クッションを抱きしめる。

するとカチャリと玄関のドアロックが外れる音が聞こえた。むくりと体を起こし、期待に胸を躍らせる。

「雄飛!」

「ただいま、まひる。いい子にしてた?」

 ソファに近づいて、雄飛は私の頭をくしゃくしゃになでる。 

「朝飛はいい子にしてるよ」

「違うよ、まひるがさ」

 雄飛は私の横に座ってじっと顔を近づけてくる。

「し、してたよ」

「なんで照れる?」

 自分でも分からないけれど、勝手に心臓がきゅんと震える――だなんて言ったら雄飛は笑うだろう。

「照れてないよ。ほらみて、今日ギブスが外れたの」

「ほんとだ」

 雄飛は私の右手をそっとつかむと手の甲に唇を押し当てた。いきなりそんなことされたら、驚きと恥ずかしさで頬が紅潮してしまう。

「ほら照れた」

「……もう。意地悪しないで」

 私はプイっと顔を背けた。

「悪い。でもほんと、治ってよかった」

「うん。それでね、久しぶりにちゃんとした料理を作ってね、あ……」