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「遅いぞ秋山! いったいどこで飯食ってたんだよ」

 慌てた様子でレコーディングスタジオに入ってくる秋山をしかりつけた。

まひるの送迎を頼んではいたが、午前中で終わるはずだった。つまり、こいつはどこかで油を売っていたということになる。

「すみませんでしたー!」

「おい」

「はい?」

「口元、カレーがついてるぞ。子供かよ、ほら」

 テーブルの上にあったウエットティッシュを渡してやる。

「さすがユウヒさん優しいっすね」

 満面の笑みを返されてしまえば、怒る気力も失せる。

こいつの強みは人懐っこい性格にある。メンタルも強いし酒も強い、頭がいいのに馬鹿を演じられる。さらに顔もいい。

もしかすると俺よりもこの業界に向いているんじゃないだろうか。

「俺の顔きれいになりました?」

「なったよ。ほら、次行くぞ。車すぐ出せるか?」

「はい、もちろんです。十七時からポスター撮り。二十二時からラジオのゲスト出演ですね」

 俺は秋山の運転する車で、撮影スタジオへ向かった。そこで情報誌の表紙の撮影をし、ぎりぎりでラジオの生放送に間に合った。