「あはは、わかってるよ。そうだ、もうお昼だしお礼になにか御馳走させて! なにが食べたい?」

「いいんですか? じゃあ、まひるさんのカレーが食べたいです」

「私のカレー?」

「はい。食堂で出してたやつです」

 秋元さんはあの雄飛と再会してしまった日あの場所にいたそうだ。三田さんと雄飛のことが気になって、どんな人が他にいたかなんて覚えていなかった。

「いいですよ。ギブスが外れたので料理もできますし、久しぶりに私も作りたいです」

 病院の帰りにスーパーに立ち寄った。

「考えてみると、こうして買い物するのも久しぶりでした」

 雄飛がケータリングやお手伝いさんを雇ってくれていたおかげで、買い出しから調理までする必要がなかったのだ。

「私今、なんだか楽しいです」

「よかったです。手料理リクエストして迷惑だったかなって思ってたんで……」

「迷惑だなんてとんでもない。作って食べてもらうことが好きなんです。だから、これからも私の手料理食べに来てもらえたら嬉しいです」

 料理人の性分とでもいうのだろうか。

私は私の料理を喜んで食べてもらえることに喜びを感じる。それに店を閉めている今、料理をふるまえるのは嬉しい。

「本当に良かったですか?」

「もちろんです。秋山さんなら大歓迎ですよ、ねー朝飛」

「うん。僕、お兄ちゃんのこと大好き」

 朝飛は秋山さんになついている。“ギャオレンジャー(に会わせてくれた)のお兄ちゃん”だから特別なのだろう。

秋山さんが押すカートに朝飛がのり、私が食材をかごに入れていく。人参ジャガイモ玉ねぎセロリににんにく、牛筋肉と赤い缶のカレー粉、スパイス。サラダ用の野菜とフルーツを買った。

「ママ、いっぱいだね」

 大きく膨らんだ買い物袋を見て、朝飛は目を丸くしている。

「本当。買いすぎたねーおいしいの作るぞー!」

「期待してます。さあ、行きましょうか」

 荷物を手に取って秋山さんは言った。