「平気だよ。いちおう帽子と眼鏡で変装はする。そんなことより、どこ行きたい?」

「うーんと、」

 結局、起きてきた朝飛に希望を聞き俺たちは水族館へ行くことに決めた。

雨の平日ということもあり、館内はとても空いていた。薄暗い館内は俺にとっても都合がいい。
朝飛は大はしゃぎで俺の手を引いてあちこち動き回った。

まひるも楽しそうにしていて、ようやく家族らしいことができて本当に良かったと思えた。

「ありがとな、まひる」

「それ、私のセリフ。忙しいのにつれて来てくれてありがとう雄飛。朝飛もすごく喜んでいたし、もちろん私もすごく楽しかった」

イルカショーを見ながら寝てしまった息子を抱いて、俺は幸せをかみしめていた。芸能の仕事をするうえで得ることが難しいと思っていた家族という存在。

理解のある愛しい妻とかわいい息子。

「……幸せだな。明日からまた頑張るかー」

「あんまり無理はしないでね」

「ああ、わかってる。ありがとな、まひる」

 俺は彼女の耳に唇を寄せると「愛してる」とささやいた。