その日。朝から雨が降り、予定されていた撮影が急遽中止になった。俺は自宅へと車を走らせる。

玄関のドアを開け、まだ暗い寝室へとそっと入った。

まひると朝飛はまだ寝ていた。当然だろう。まだ4時だ。ベッドの端に腰を下ろし、二人の寝顔を見つめる。

少し見ないうちに朝飛は大きくなった気がする。そっと頭をなで、ふっくらとした頬を指でつついてみる。やわらかくて愛おしい。この感情は今まで誰もの感じたことのない特別なものだ。

「今ならよくわかるよ。子供のためには自分を犠牲にできるっていう意味が……」

「――雄飛?」

 驚いたような顔で、まひるはむくりと起き上がる。

「起こしてごめん」

「どうしたの? 今日は映画の……」

「撮影が中止になったから、帰ってきた。まひるに会いたくて」

「私も。……雄飛に会いたかった」

 そう言って目に涙をためたまひるをみて、たまらなくなる。

「ほったらかしにしてごめん。おいで」

 俺はまひるの手を引いて、リビングに出る。寝室のドアを閉め、彼女の肩を抱き唇を奪う。久しぶりのキスに体の芯が熱を帯びていく。

「朝飛が起きるのは何時?」

「六時ごろ、かな」

「じゃあ、二時間は大人だけの時間だ」