気付けば朝になっていた。

起きてきた朝飛は私の隣にちょこんと座ってテレビを見つめる。

「ママ~」

「なあに?」

「パパかっこいいね」

 その朝飛の言葉に私は驚きて聞き返す。

「朝飛、今パパって言った?」

 まだ誰も雄飛がパパだとは説明していないはずだ。いきなり現れた自分を父親だというにはまだ信頼関係が築けていと彼がいったから。

「お兄ちゃんは僕のパパだよね? 違うの?」

 不安そうに朝飛は尋ねる。

 どしてそう思ったのか分からないが、雄飛の朝飛への愛情は確実に伝わっていたんだろう。それを素直に受け取って、この子は本能的に彼を父親だと認識した。

私は動揺を隠して笑顔を作る。

「……違わない。お兄ちゃんは朝飛のパパだよ」

「よかった。僕ねパパのこと大好きなんだ。ママは?」

「ママもパパのこと大好きだよ。だからこれからも三人一緒に暮らそうね」

 いいながら涙がこぼれた。私はいろんな理由を付けて自分の気持ちにふたをする癖がついてしまったのかもしれない。

朝飛みたいに素直に自分の気持ちを伝えていたら、雄飛を困らせることもなかったのに。

「どうしたのママ? お手てがいたいの?」

 朝飛は心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「ううん、痛くないよ。ママね、パパに会いたくなっちゃったの」

「僕も会いたいな~」

「でもパパはお仕事でしばらく帰れないって……」

 スタジオに行くと言っていたけれど、どんな仕事かは言わなかった。

「テレビ見ていたら会えるかな」

 朝飛が言う。

「どうだろうね。調べてみようか」

 私はデジタルの番組表で雄飛の名前を検索する。今日は二十時からの生放送のトークバラエティーへ出演するようだ。

朝飛は寝る時間だけれど、少しくらい夜更かしさせてもいいだろう。

「夜のテレビに出るって。観よっか」

「うん! 楽しみだね、ママ」

 朝飛の笑顔に救われる思いがした。