「今日さ、弁護士の先生とあったんだ」
撮影の合間に弁護士と面談したと雄飛は言った。
私たちの婚姻と朝飛の養子縁組の手続きをすすめてくれるという。
「もう少しだけ待って。法的にも夫婦になったら志津香さんにも報告する。事後報告だからあの人の力もそう簡単には及ばない」
確かにいくら三田さんといえども、事務所の力を使って離婚させられないだろう。
その点は安心かもしれない。けれど私は雄飛のこれからの仕事に影響がないか気になってしまう。
「本当にそれでいいのかな。私と結婚して仕事は大丈夫?」
すると雄飛は大きなため息を吐いた。
「……あのな。いい加減怒るぞ。俺ってそんなに信用できない? 結婚したからって人気が陰るような仕事の仕方はしてないぜ」
ハッとして雄飛の顔をみると、すごく悲しそうな目をしていた。
「もし、まひるが俺と結婚したくないならそう言って。朝飛の養育費は払うし、ちゃんと認知もする」
いいながら雄飛は立ち上がる。
「……どこへいくの?」
「スタジオ。これからしばらくは帰ってこられないから」
まるで突き放すようないいかたに引き留めることはできなかった。
私はソファーに座ったまま、無機質に締まるドアの音をただ聞いていることしかできなかった。



