「ギブスはあとひと月はつけていましょうね。次の受診の予約を入れておきます」

 整形外科の先生はそう言ってパソコン画面に視線を戻した。

「分かりました」

 右腕の骨折は以外の傷はほぼ完治していて、治療の必要がないそうだ。

四週間後にギブスが取れれば、元の生活に戻れるだろう。店も再開できる。となれば雄飛のそばにはいられなくなる。通勤するのは無理だ。せっかく家族三人で暮らせるようになったというのに、私のやりたいことのためにこの生活を壊していいのだろうか。

病院の会計を済ませると午後の一時を過ぎていた。私はスマホで検索し、ランチができる店を探した。

「ここにしようかな。近いし」

 そう決めてスマホをしまおうとすると、秋山さんから電話が入った。

『まひるさん? 秋山です』

「秋山さん、今日はありがとう。朝飛はお利口にしてた?」

『はい。お利口でしたよ。まひるさん今どこにいますか?』

「今? 今は病院の前の道を歩いてるところ」

『なるほど、じゃあそこにいてください。数分で向かいます』

 秋山さんはそう言って電話を切ってしまった。私は言われたとおり、病院の前の道で秋山さんを待つことにした。

――数分後。私の目の前に一台のワンボックスカーが停まった。かと思うと、後部座席のスライドドアが開く。