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 夜明け前。幸い雨はやんでいた。

まひると朝飛の荷物を車に積む込むと、都内に向かって走り出した。

朝飛はまだ眠っている。起きてから説明しようと思っているがちゃんとわかってもらえるだろうか。
とにかく彼女の腕が完治するまでは都内の俺のマンションで暮らそうと思っている。

55平米の1LDK、三人でも十分暮らせる広さだ。

駅からは少し遠いけど、静かで治安もいい。マンションの敷地内で生活のほとんどが住んでしまうので不便もないはずだ。

やがて水平線から朝日が昇り始めた。まるで俺たちの門出を祝福してくれているようだった。そして朝飛が生まれてきた日のことを思った。

まひるは絶望の中で朝飛を身籠った。でも、生まれてきたこの子はこの名のように希望に満ち溢れた太陽のような存在だったのだろう。

二時間ほどで自宅のマンションに到着した。

地価の駐車場に車を止めると、向かい側に停まっていたワゴン車から男が飛び出してくる。マネージャーだった。車に駆け寄ってくると、運転席の窓をたたく。

「ユウヒさん! いったいどこに行ってたんですか。スマホもつながらないし」

 もしかして、昨日の昼から七時までずっと俺を待っていたのか。申し訳なく思ったが、女に会いに行くなどと正直に話したら止められていただろうし。

「悪かったな、秋山。大切な用事があったんだ」

「大切な用事って、え? 誰ですかこの人たち」

 後部座席にいる二人を見つけた秋山は慌てた様子で聞いてくる。