ついさっき雄飛が言っていたことを思い出し、私はいたたまれない気持ちになる。

「ごめんね」そう言いかけた時、雄飛が口を開いた。

「彼女はあなたをだましていません。僕たちが再会したのはほんの数時間前。それまで彼女はひとりで仕事と育児を両立してたんです。まひるのことをいつも助けていただきありがとうございました」

 雄飛はコウ君に向かって深々と頭を下げる。慌てて私も頭を下げた。

「……もういいよ」

「コウ君……」

「ユウヒが相手じゃ俺、敵わねえし。まひると朝飛が幸せになるならそれでいい」

「じゃあ」そう言ってコウ君は店を出ていく。大きなはずの彼の背中がとても小さく見えた。