それから私は雄飛に手伝ってもらいながら店の片づけをした。
腕が治るまで最低でもひと月は休業せざるを得ない。
「しばらくは俺のマンションで生活して、その後のことはゆっくりと考えよう」
「そうだね、わかった。じゃあ、臨時休業の張り紙をドアに張って、コウ君に連絡しよう」
「コウ君て?」
「コウ君ていうのはずっとお世話になっている漁師さん。朝飛もなついてて、今朝も保育園まで送ってくれたの」
そう言うと雄飛は急に真顔になった。
「へえ。その人、まひるのこと好きなのかもね」
「……まさか。そんなはずないよ」
コウ君が私のことを好きかもしれないなんて、今まで一度も考えたことはなかった。
「とにかく連絡するね。明日の仕入れもストップしないといけないし」
もう寝ている時間かもしれないと思って、LINEに怪我をして店をしばらく閉めることにしたという内容でメッセージを送った。
それから数分後、店のドアをたたく音が聞こえた。
まさかと思い外に出るとコウ君が立っている。
「コウ君!」
「まひる。LINE見て心配で飛んできた。思ったよりも元気そうでよかった」
いいながらコウ君は私を抱きしめる。
「まひるになにかあったら、俺……」
「……ねえ、コウ君。放して」
私は左手でコウ君の胸のあたりを押して離れようとした。けれど、彼の力にはかなわない。こんなところを雄飛に見られたら誤解されてしまう。



