「でもしばらくは、私たちのことは秘密にしておいて欲しいんだけど……、いいかな?」

 朝飛はまだ小さいし、私だって週刊誌に追われるのは嫌だ。

雄飛と一緒にいるためには秘密の家族でいる必要がある。

「まひるがそうしたいならそうしよう。二人のことは命を懸けて守るよ」

「ありがとう、雄飛」

 雄飛は私の左手の薬指に指輪をはめてくれた。

「きれいな指輪」

 大粒のダイヤの周りを小粒のダイヤが花びらのように囲んでいる。指を少し動かすだけでキラキラと光があふれだす。

「まひるの方がきれいだよ」

「うそ。雄飛はいつもきれいな人たちに囲まれてるし、私なんて……」

 同じ事務所の白根万喜はなりたい顔ランキングナンバーワンだ。もちろん社長の三田志津香だって奇跡の美魔女と称えられている。そんな美しい人たちばかりを見ている雄飛に言われても素直に受け取れない。

「確かに俺のいる業界は顔の造作が整っている人は多いよ。だけど美しさの基準なんて人それぞれだよ。比べるものじゃない。まひるのこのつぶらな瞳も、小さめの口も俺は大好き」

 雄飛はそう言って私の唇を指でなぞった。

「まひる」

 名前を呼ばれて雄飛を見ると、ゆっくりと顔が近づいてくる。私はそっと目を閉じた。ゆっくりと唇が重なって懐かしいぬくもりと愛おしさを感じた。

「もう二度と、離れるなよ」

 雄飛は言う。私だって離れたくない。もう二度と。 

「もちろん。朝飛と三人、ずっと一緒だよ」

 私はこの上ない幸せな気持ちに包まれていた。

体の傷は痛むけれど、雄飛がそばにいるというだけで大丈夫な気がした。もし朝飛と二人きりだったら不安に押しつぶされていたかもしれない。