蓋を開くとダイヤモンドの指輪がキラキラと光り輝いている。

「……指輪だ」

「これはさ、4年前のクリスマスに渡そうと思って買ったんだ。プロポーズしようと思って」

 私が雄飛の前から姿を消した日だ。まさか、プロポーズをするつもりだったなんて考えもしなかった。

「何度も手放そうとしたけど、出来なかった。いつか渡せるって信じてたから。だからこうして渡せてよかった」

 雄飛の気持ちが痛いくらいに伝わってくる。私と同じように苦しみながらこの数年を生きてきた。

「ありがとう。うれしいよ、雄飛。でも、だめなの」

「だめってどういうことだよ!俺が分かるように説明しろよ、まひる」

 だって私は三田さんからわたされた手切れ金で店を買い、生活の糧にさせてもらった。いまさらなかったことにして雄飛と結婚するなんて許されない。

「ごめん、いろいろあって……」

「志津香さんか。そうだろ? 別れるようにって脅された。それ以外考えられない」

「なぜそう思うの?」

 雄飛があまりにもそう言い切るので驚きつつも不思議に思った。

「白根さんがそうだからだよ」

「白根さんて、女優の白根万喜?」

「ああ、俺の事務所の先輩なんだよ。志津香さんは白根さんの交際相手に500万円渡して別れるように詰め寄った」

 私の時と金額までおんなじだ。