雄飛を店に招き入れ、私はカレーが入った寸胴に火をつけた。

いつも簡単にしていることが片手だと婚に難しいなんて思いもしなかった。

「俺がやるよ」

「……ありがとう。じゃあ、遠慮なく」

 朝飛用のカレーは小さな鍋に分けてある。それには牛乳を足して延す。小皿に福神漬けとサラダ。後は売れ残りの肉じゃが。

今日は雄飛が手伝ってくれるからいいけれど、これからしばらくの間はまともな料理は作れないだろう。店は休むしかなさそうだ。

「……来月も赤字かぁ」

 誰にも聞こえないような小さな声で呟くと小さくため息を吐いた。

「さあ、できたよ。朝飛はどこに座る?」

 四人掛けのテーブルにお皿を運びながら朝飛に声をかける。

「ぼくはここ。ママはそっち」

 そう言いながら自分のスプーンとコップを雄飛の隣に移動させた。

「ママの隣じゃなくていいの?」

「いいの!」

 あまりにもきっぱりというので、面食らう。

てっきりママの隣というと思ったのに。

雄飛は嬉しそうに朝飛を隣に座らせている。その様子があまりに自然で、胸の奥が熱くなる。ああ、このまま三人で暮らせたらどんなに幸せだろう。