「なあ。俺、悪者みたいだろ。朝飛が起きたら怒られちゃうよ」

「ごめんっ、でも、とまらなくて」

 自分でもどうしてこんなに泣けてくるのか訳が分からない。ただひとつ言えるのは、これは悲しい涙ではないということだ。

「俺が運転中じゃなければ、まひるのこと抱きしめてやれるのに」

 雄飛は言った。私も雄飛に抱きしめて欲しかった。でも、家に着いたとたん朝飛が目を醒ます。

「ママ、おなかすいた」

 時計をみるともう7時だ。朝飛の夕ご飯の時間はとっくに過ぎている。

「ごめんごめん、すぐにご飯にするね。今日はカレーでいい?」

 家を出る前にカレーを仕込んでおいて本当に良かったと思った。

「お兄ちゃんも食べよう」

 車から降りると、朝飛はすかさず雄飛の手を握った。すっかりなついてしまったようだ。

「雄飛、時間は大丈夫なの?」

「ああ、まあ」

「無理しなくていいからね」

 多忙な彼をこれ以上引き留めたらいけない気がした。

「まだ話足りないし、もう少し一緒にいたいんだよ」