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 ずぶ濡れになりながら車に戻るとスマホがなっていた。

ため息をひとつついて、その電話に出る。

『ユウヒ? あたしよ。あなた今どこにいるの。誰かと一緒じゃないわよね?』

 志津香さんは矢継ぎ早に質問してくる。ああ、また始まったと思った。彼女の束縛は常軌を逸している。俺が金を産む商品なんだから仕方がないのかもしれないけど。

「すみません、ひとりでドライブしてます……」

『こんな大雨に日になにドライブですって? あなたねえ、事故でも起こしたらどうするの?』

 ヒステリックな声に俺はスマホを耳から離した。

「……大丈夫ですよ」

俺の車は海外社製のSUVだ。いかつくて頑丈な車体でぶつけられても安全だからと志津香さんが選んだ。

でももし、事故で命を落とすようなことがあっても構わない。俺の大切な人は俺じゃない誰かに幸せにしてもらえているみたいだから。

『まったくあなたはいつもそう。楽観視するにも程があるわよ。とにかくすぐに自宅に戻りなさい。十五時には迎えに行くわ』

「分かりました」

 今日、十八時からの情報番組の生放送へ出演予定だ。新しいドラマが始まるのでその宣伝のために。

今日の収録でちゃんと笑えるだろうか。

四年前、俺の前から姿を消した最愛の人。

やっと見つけたと思ったら結婚していた。しかも子供まで作って……。

おめでとうっていえなかった。だって、ぜんぜんめでたくなんてないだろ。まひるを幸せにするのは俺だと思っていた。

だから売れるために必死で仕事をこなした。そのせいで、彼女には寂しい思いをさせてしまったのは反省している。

でも、だからって他の男と結婚するなんてあり得ないだろう。