1. 再会は必然だった
私の朝は早い。
まだ夜が明けきらない時間に起きて店で出す料理の仕込みを始める。
ここは関東近郊の小さな漁師町にある”岬食堂”。カウンター五席。四人掛けのテーブルがふたつあるだけのこじんまりとした店だ。
店主は私、小森まひる二十九歳。出身は北関東の山間部。高校卒業後に上京し東京に住んでいた。しかし四年ほど前にとある事情でここに引っ越してきた。
サーフショップだった建物を格安で購入し店舗兼住宅に改装。地元の漁港関係者やサーファーといった客層に合わせて、主に男性に好まれるメニューを出す食堂としてオープンさせた。
営業時間は7時から15時。これもこの地域に合わせての事。
朝日が昇るころガラッと大きな音を立てて店の戸が開く。



