「身体、大丈夫?」

奏多さんは私の頭にポンと手を乗せてベッドに転がっている私の顔を覗き込む。

「は、はい。大丈夫……です」

私はまだ恥ずかしくて小声で答えた。

「桜、『初めて』やろ?無理したんとちゃう?」

「何で私が『初めて』って知って……?」

「だってずっと蒼志君に片想いしてたって言うてたやん。桜はこういうの好きな人としかやらんだろうし、だったら今日が初めてやろなぁと思て。多分俺、桜の初彼やろ?」

奏多さんは自信たっぷりの笑みをしながら、嬉しそうに私の反応を見ている。

「そうです……けど」

「やっぱり。嬉しすぎるわ。俺、始めは桜の事見てるだけで良かった。でも話をするようになって、もっと距離を縮めたいと思うようになった。そしてずっと側にいて欲しいと思うようになった」

私も奏多さんに共感しながら、話の続きを聞く。

「人間の欲なんて無限大やな。次から次に欲が更新されていく」

「私も同じです。一度だけでもいい。許されるなら奏多さんと恋愛がしたいと思ってました。だから今が幸せ過ぎて、先の事を考えるのが……怖いです」

私達はお互い家系を背負っている。だから許される恋愛じゃない事も分かっている。

想いが伝わって今が幸せな分、いずれ来る別れを考えるのが怖かった。