許されるなら一度だけ恋を…

「嘘……ついちゃいました。実はここに来る時にも友達と会うって嘘ついて来たんです。こんな事慣れないからまだ心臓がドキドキしてます」

私は下から奏多さんの顔を見上げてニッコリ微笑んだ。

その瞬間、奏多さんは私にキスをしてきた。突然過ぎて私は目を瞑るのを忘れている。

「あかんって。そんな事言われたら、俺もう我慢できんから」

離れた唇がまた私に重なる。今度は長めのキス……私は顔だけではなく、身体中が熱くなっていた。

「はぁ。ほんまはこのままベッドに押し倒したいけど、やっぱり熱下がるまで我慢するわ」

キスの後、奏多さんは冷静さを取り戻したのか私を抱きしめながらため息まじりにそう言った。

「今はきちんと休んで風邪を治して下さい」

奏多さんはベッドに戻り横になる。私はベッドの横の床にペタンと座り奏多さんの手を握った。

薬が効いてきたのか、奏多さんはすぐに寝たようだ。おでこに手を当てるとやっぱり熱い。

『早く風邪が治りますように』と心の中で祈りながら奏多さんの手をギュッと握りしめる。

そして気がつくと私は奏多さんが寝ていたはずのベッドに横になっていた。何で!?と思い、勢いよく起き上がり隣を見る。

「奏多さんがいない」

辺りを見渡したけど部屋に奏多さんはいない。