許されるなら一度だけ恋を…

キッチンで食べ終わった茶碗を片付けてから、また奏多さんの元へ戻った。

「なんか色々ごめんな。ありがとう」

「いえ、私が好きでやってる事ですから。じゃあ私はそろそろ帰りますね。奏多さんはゆっくり休んで下さい」

「俺も玄関まで行くわ」

奏多さんはベッドから降りて、熱でボーッとしながら私の前まで移動してきた。そうか、私が帰った後玄関に鍵をかけなきゃいけないのか。

「すみませ……ん」

私が謝ろうとすると、奏多さんは突然私をギュッと抱きしめてきた。さらに熱が上がってきたのか、奏多さんから凄い熱気が伝わってくる。

「なぁ、今日うちに泊まっていかへん?」

奏多さんの囁くような声が耳に入る。

「えっ?」

私は思わず奏多さんの顔を見る。すると奏多さんは私の上げた顔をまた自分の胸に戻し、顔が見えないようにして話を続けた。

「風邪うつしとうないし、ほんまは家に帰さなあかんけど……やっぱ帰したくない」

奏多さんの熱がうつったのか、私の顔も熱くなる。奏多さんが私を必要としてくれるのなら……

私は奏多さんから離れてバックから携帯を取り出し、その場で母に電話をかける。

「もしもし私だけど、今日は友達の家に泊まってくるから……うん、おやすみなさい」

通話が終わると、私は携帯を持ったまま奏多さんの胸にポンと顔をつけた。