「着いた」

勢いで奏多さんのマンションへ来てしまったけど、やっぱり迷惑かも。そう思うとインターホンを押そうとする私の指がピタッと止まる。

でも心配だし……少し考えた結果、思い切ってインターホンを押した。

「……はい」

インターホン越しに奏多さんが返事する。

「あの、華月です。突然来てしまってすみま……」

すみませんと謝ろうとしたところで、ドアが勢いよく開き、冷えピタをおでこにつけた奏多さんが出てきた。

「桜……さん?」

「ごめんなさい。心配で来てしまいました。でもすぐに帰りますから」

「せっかく来てくれたのにこんな所で立ち話もなんだから、部屋へどうぞ」

奏多さんに案内され、私はすみませんと言いながら部屋にお邪魔させてもらった。

「何か飲み物入れるけど、何がいい?」

熱のせいか、フラフラしながら奏多さんはキッチンに立って私に聞いてくる。

「お気遣いは大丈夫ですから、奏多さんはベッドで横になって下さい」

私はフラフラしている奏多さんを支えながら一緒にベッドまで行き、横になった奏多さんに布団をかけた。

「お薬飲みました?食欲はあります?」

「いや飲んでないし食欲もない」

「少しでも食べてお薬飲みましょう。キッチン借りていいですか?お粥作りますね」

奏多さんの了解を得て私はキッチンに入った。米や調味料もあるし冷蔵庫の中にも色々食材が入っている。ちゃんと自炊してるんだ。さすが奏多さん。