夜になっても雨は降り続けている。だいぶ小雨にはなってきたが、シトシトと降る雨はまるで私の心を表すかのようだ。

窓際に行き、軽く一息つきそっとカーテンを閉めた。

ピリリリリ……

部屋でゆっくりしていると、私の携帯が鳴り始めた。こんな時間に誰だろう。テーブルに置いている携帯を手に取り着信相手の名前を確認すると、そこには奏多さんの名前が表示されている。

「もしもし……奏多さん?」

昨日、気不味い空気で電話が切れたので、正直どのテンションで話をしていいのか分からない。

「もしもし……桜さん、今自分の部屋におる?」

「はい、部屋にいますけど」

何でそんな事を聞いてくるのか不思議に思っていると、携帯の向こうで奏多さんの『良かった』と囁くような小さな声が聞こえきた。

「……窓から外見てくれる?」

「えっ外をですか?」

よく分からないまま、私は奏多さんに言われた通りカーテンを開けて外を見る。

暗い夜の景色に雨音が聞こえる。そして視線を空から地面に移すと、家の前にある外灯の光から誰かがいるのが分かった。

黒っぽい傘を持ったその人はゆっくりと私のいる部屋を見上げる。傘をずらして見えたのは奏多さんの姿だ。

どうして!?

私は自分の目を疑いながら窓を開けて、もう一度よく確認する。

やっぱり奏多さんだ。私と目が合うといつもの優しい笑顔で私を見つめていた。