7歳の侯爵夫人

相手は俺の友人でもあり、商売を手広くやっている裕福な子爵家の嫡男だった。

俺とセリーヌを別れさせたかった義母は、俺に隠れて色々画策していた。

昔の男…、それも高位の貴族を使って、彼女と彼女の両親、そして友人の家に、縁談を持ち込ませたのだ。

名のある貴族の紹介なら無碍には出来ないし、セリーヌの両親も、相手が裕福な家なら反対はしない。

寧ろ、義母という厄介な小姑がいる俺よりよっぽど条件がいいと乗り気になったらしい。

最初は反発していたセリーヌも、俺への疑心暗鬼から不満や切ない想いをその男に相談するうち、だんだんと気を許すようになっていったようだ。

それにつれて、俺への気持ちも薄れていく。

男の方は以前からセリーヌに少なからず好意を持っていたようだが、今までは友人の恋人だからと必要以上に近づかないようにしていたらしい。

だが、きちんと持ち込まれた縁談であるなら話は別だ。

最初は俺に遠慮する気持ちもあったのだろうが、彼女と会ううちそんな罪悪感はだんだんと薄れていったと言う。

別れ話の席に彼も同席し、2人からそんな話を聞かされた。

もう完全に、セリーヌは彼との未来を見ていた。

口を挟む余地はなく、言い訳も、謝罪も、聞いてはもらえなかった。

最早、2人を責める気さえ起きなかった。

それまで自分の周りで何が起きているかもわからず、愚かにもただ恋人を信じていた俺は、呆然とするしかなかったのである。