7歳の侯爵夫人

ところがー。

喪があけるのを一緒に待っているはずだったセリーヌは、オレリアンの求婚を待たずに他の男に嫁いで行った。
オレリアンと同じ子爵家の息子で、友人だった男にだ。

その縁談をセリーヌの両親に持ち込み、上手くいくよう画策したのはカレンだった。
そして後から知ったことだが、カレンはセリーヌに嫌がらせもしていたらしい。
また、彼女にまるでオレリアンと自分が男女の仲であるかのようなことを匂わせてもいた。

たしかに、カレンは出会った頃から、年が近く美丈夫な義理の息子に執着していた。
特に伯父が亡くなってからは使用人の前でも平気でオレリアンにまとわりついていた。
すでに義父がいない伯爵邸で同居し、使用人の噂にもなれば、それは事実のようにセリーヌの耳には入ったことだろう。

しかし、伯爵家を継いだばかりで騎士の仕事と領地経営に必死になっていたオレリアンは、忍び寄る悪意に気づかなかったのである。
伯母の誘惑は歯牙にもかけずにいたが、彼女が裏でしていた小細工には無頓着だったのだ。

恋人をなくし失意のオレリアンに届いたのは、今度は元王太子の婚約者で、公爵令嬢コンスタンスとの縁談だった。
王家からの命令に近い縁談であり、さすがのカレンも反対するわけにはいかない。

オレリアンに至っては、もうどうとでもなれという心境だった。
どっちにしろ拒否できない縁談であるし、婚約解消された令嬢と恋人に振られた騎士なんて、なんてお似合いの2人なのだろう。

形だけの…書類上の夫婦にはもってこいではないか。