怪我をした頭の傷はもう何でもない。
記憶はまだ戻らないが、怪我自体は大したことはなかったのだ。

あの怪我は、ヒース侯爵邸前で馬車に接触するという事故に遭ったためだという。
コンスタンスが飛び出し、馬車に轢かれそうになったというのだ。

どう聞いてもコンスタンスが悪いのだろうに、父や兄はオレリアンのせいだと言う。

詳しく教えてくれないからよくわからないが、オレリアンとコンスタンスの夫婦仲はあまり上手くいっていなかったらしい。
父がコンスタンスを連れ帰ったのも、何度来てもオレリアンに会わせないのも、それが理由のようだ。

それでも懲りずにプレゼントを贈り、会いに来る夫に、コンスタンスは申し訳ないと思う。
こんなに足繁く通ってくるところを見ると、彼はとても誠実な人なのではないだろうか。

「それほど…、私に、会いたいから…?」

父に邪険にされてもオレリアンがコンスタンスに会いに来るのは、コンスタンスに会いたいから?
仲が悪かった妻に、そんなに会いたいと思うだろうか?

それはただ、コンスタンスが彼の奥さんだから?
それとも…。

「それとも…、本当は私を…、好き…、だから?」
口に出してみて、コンスタンスは顔がカッと火照るのを感じた。

「好き…、私を…?」
金色の髪に蒼い瞳の、美しいオレリアンの姿を思い出す。

「私の旦那様…、カッコいい、かも…」

キャッ!
コンスタンスは両手で自分の両頬を挟んで、その場でぴょんぴょんと跳ねた。