7歳の侯爵夫人

「………?」
オレリアンが振り返る。

「行か……で、オレール…」
コンスタンスはオレリアンに向かって右手を伸ばしていた。
その顔はすでに涙でぐしゃぐしゃになっている。

「……ル、オレール…、オレール」

オレリアンは走り寄って、その手を左手で掴んだ。

「コニー!」
右手はコンスタンスの背中に回す。
小さな体を包み込むように抱きしめると、彼女はオレリアンの胸に額をつけて、嗚咽を漏らし始めた。

「オレール、オレール…。行かないで…」

コンスタンスは初めて、『7歳の自分』以外で夫を『オレール』と呼んだ。
その可愛らしい呼びかけに、オレリアンは歓喜する。
妻の体をギュッと、力強く抱きしめた。