王妃が会うと言い出したのだ。
一度でも顔を見せない限り、話は終わらないだろう。

おそらく王妃は、コンスタンスが夫と別居していたのも、記憶喪失に陥ったのも、不幸な結婚と未だに王太子を慕うが故と思い込んでいる。
だから以前王太子が言っていたようにコンスタンスを夫と離縁させ、王妃付きの侍女にした上で側妃として召上げるという件を話すつもりなのかもしれない。

そしてそれが、コンスタンスの幸せにも繋がると思い込んでいるらしいから厄介だ。
だからそんな与太話を潰すには、コンスタンスがすっかり元通りになって幸せな結婚生活を送っていることをわかってもらうのが一番だ。
しかし、実際のところ、コンスタンスは未だ記憶を失っていて、夫とは別居中である。

(仕方がない…)
公爵は目を閉じ、大きく息を吐いた。
そして目を開くと、娘を真っ直ぐに見つめた。

こうなったら、王太子がコンスタンスを側妃に迎えたいと言った件を、本人の耳に入れないわけにはいかないだろう。
公爵は言葉を選び、慎重に娘に話し始めた。