10日ほど前、オレリアンが1人でルーデル公爵邸を訪ねて来た。
コンスタンスがパレードを見たいと言っているが、自分はパレードの先導役だから連れて行ってやれない。
だから、この邸から見せてやって欲しいと。

当然公爵とエリアスも成婚式とパレードで忙しいから付き合ってはやれないが、「では私が一緒に見ましょう」と公爵夫人は快諾した。
オレリアンはホッとして義母に礼を言ったが、だがその時、こうも言っていた。

「矛盾していますが、本当はパレードなど見せたくないのです。コニーが時々頭痛を起こすようになったのは王太子殿下と再会してからだと、義母上もご存知だと思います。ひょっとして、コニーの脳は、記憶を取り戻そうとしているのかもしれません。だとしたら、パレードを見て、また頭が痛くなったりするかもしれない。私はそれが怖いのです」

真剣に話すオレリアンに、公爵夫人は安心させるように微笑んだ。

「私がついているわ。それに、公爵邸には侍医が常駐しているから、隣室に待機させておくわ。…それにね?」

公爵夫人は、オレリアンに少し悪戯っぽく笑って見せた。