オレリアンは心の底からウンザリしていた。
王太子でなければ、部屋から蹴り出し、邸からつまみ出すところだ。
しかしそんなことをすればオレリアンの首が飛ぶ。
だからと言って、今のコンスタンスに会わせるわけにはいかない。
フィリップはコンスタンスが事故に遭ったことは知っているが、7歳以降の記憶を失っていることは知らないはずだ。
それはヒース侯爵家とルーデル公爵家だけの極秘事項であるのだから。

「私は本当にコニーを愛しています。彼女を手放す気はありません。きっかけはともかく、妻と私は、今は幸せに暮らしているのです。王太子殿下とはいえ、それを引き裂く権利はないはずです」
「貴様…!不敬だぞ!」
護衛が剣の柄に手をかけるが、いちいち過剰に反応する護衛にもウンザリだ。
貴人の護衛としては当然の反応なのだろうが、理不尽なことを言われているのはこちらなのに。

権力を振りかざす王太子にも護衛にも吐き気がする。
コニーが慕っていた王太子とは、こんな話のわからない人間だったのか?
一体この傲慢で独善的な王子に、どうやって帰ってもらえばいいのだ?