黙ってしまったオレリアンに、フィリップは真っ直ぐ向き合った。
だが、その目は幾分威圧的だ。

「コニ…、侯爵夫人は…、不幸な結婚生活を送った挙句、事故に遭ったと聞いている。事故前にはずっと自領に閉じ込もり、そなたと別居していたという事実もつかんでいるのだ。彼女が不幸な目に遭っているなら、それは、そう仕向けた王家の…、私の咎だ。お妃教育を10年も受けた素晴らしい貴婦人である彼女が田舎にこもっているなんて、およそ彼女らしくない。だから…、彼女が彼女らしく生きられるなら、手を差し伸べたいと思ったのだ」
「手を…、差し伸べたい…?」

不敬ながら、オレリアンは王太子の言葉を繰り返した。
どうしても、言っている意味がわからなかったのだ。
すでに人の妻になっているコンスタンスに手を差し伸べるとは、一体どういうことなのか。

「まさか…。コニーを差し出せとでも言われるのですか?」
王太子を見据えると、彼も、射抜くような瞳をオレリアンに向ける。

「殿下はもうすぐ隣国の王女様と結婚されるではありませんか。手を差し伸べるとは一体どう…っ」

「私の…、側妃候補として、王宮に迎えたいと思う」

「…………なっ!!」