「鼻の下…?何のことだ?」
リアの言葉に、オレリアンは首を傾げた。
主人に対してかなり不敬な言い方だが、オレリアンに対して厳しいリアはいつもこんな感じだ。
そしてオレリアンも、それを気にすることはない。

「だから。あの時商工会長のお嬢様たちが旦那様に群がっていたのがお気に召さなかったのでしょう」
「たしかにあの日の旦那様は鼻の下を伸ばしてたからなぁ」
付け加えるように言ったのはもちろんダレルだ。

「はぁ?俺が?」
「ええ。ベタベタされて、満更でもないお顔を」
とリア。

オレリアンは眉間に皺を寄せた。
たしかに商工会の会長宅には10代前半から後半くらいの三姉妹がいた。
会長に紹介され、挨拶した後なんだかんだと寄ってきて話しかけられはしたが、三姉妹の顔など覚えてもいない。

「酷い誤解だ。鼻の下なんか伸ばすもんか。それに、昨夜は本当に見回りだったと、同行していたダレルならわかっているだろ?」
咎めるように2人を見ると、ダレルはニヤニヤと、リアは冷ややかに笑っていた。

そのままコンスタンスの方を見ると、彼女は相変わらず頬を膨らませ、唇を尖らせて明後日の方向を向いている。