「俺の妻に近寄るな!!もう君と話すことは本当に何も無いんだ!迷惑だ!!二度と俺たちの前に現れないでくれ!」

コンスタンスにまで理不尽で意味不明な言葉を吐くセリーヌに、俺はかなり強い口調で拒絶の姿勢を示した。
本当に、心の底からもう関わりたくないという態度で。
俺が守るべき女性は、この昔の恋人などではなく、妻なのだから。

かつて俺に拒絶などされたことがなかったセリーヌは、ここに及んでやっと俺の本気を理解したらしい。
突然大粒の涙をボロボロッとこぼすと、
「酷い!!」
と一言叫んで俺たちに背を向けた。

やっとわかってくれたかとホッとしてコンスタンスに向き直った瞬間、彼女が目を見開いた。

そして、突然俺の横をすり抜けた。

「待って!危ない!」

……………え⁇

本当に一瞬だった。

俺の目がすり抜けて行くコンスタンスの残像を追って振り返った瞬間、彼女がセリーヌを突き飛ばすのが見えた。
そこへ、通りを走る馬車が突っ込んで来る。

「コンスタンス!!」

ーガッ!!!ー

馬車に跳ね飛ばされたコンスタンスの体が宙を舞う。

「コンスタンスーーッ!!!」
一瞬、コンスタンスと目が合ったような気がした。